RESEARCH
淡水域における、微生物の生態や機能に興味があります。
特に河川を対象として、野外調査、顕微鏡観察、DNA解析、バイオインフォマティクス、化学分析、培養といった手法を用いて研究を展開しています。
菌類の多様性や生態
河川は、水を介して陸域と沿岸域をつなぎ、物質を輸送するパイプのような役割を担っています。古くから、陸域から河川に供給される有機物の大部分は、流域内をそのまま通過して海に流出すると考えられてきました。しかし近年になると、陸域から供給される炭素のうち約4割もの量が、内水域で貯留または代謝によって大気放出されていることが明らかになってきました。河川では、微生物生態系が河川の有機物代謝に大きな影響を与えています。河川は水流の影響で常に変化する流動的な環境なので、微生物活動を最も安定的に行うことができる場は、河床に発達するバイオフィルムです。河川に溶存する有機物の大部分はバイオフィルムによって取り込まれ、河川内で消費されます。よって、河床のバイオフィルムに生息する微生物の生態や機能を解明することは、河川の水質をより適正に管理する上で重要であり、新しい技術開発の基盤になると期待されます。
バイオフィルム内の微生物生態系には、藻類、細菌類に加えて、機能未知の菌類が存在することが知られています。バイオフィルム内部では、菌類を介した有機物代謝のネットワークが存在すると予想されますが、河川における菌類の生態や機能には未だ不明な点が多く残っています。本研究では、菌類群集が担う未知な生態学的機能を解明することで、河川生態系と水質管理への貢献を目指しています。
河川生物が微細な有機物の分解に与える影響
河川生態系において微細有機物(Fine Particulate Organic Matter: FPOM)は0.45µm〜1mmの有機物を指す言葉であり、その由来や構造は実に多様であることが知られています。FPOMは、水生昆虫、原生動物、菌類、細菌類といった様々な河川生物に利用されると考えられています。しかし、自然環境中に存在するFPOMの化学的性質は複雑であり、それぞれの河川生物との相互関係のパターンは不明なままでした。
本研究では室内実験を実施することで、それぞれの河川生物がFPOMの分解や無機化にもたらす影響や、関連する分類群を明らかにすることを目指しています。